モモカ

「すいません、桃ジェラート一つください」
その声で私の眠りは破られた。声の主はお客さんであった。私は公園の売店でバイト中であった。しかし居眠りをしていた。まったく、最低である。
「はい、申し訳ございません。桃ジェラートですね」
お金を受け取り、コーンにジェラートを盛って渡す。居眠りの罪悪感からジェラートは心持ち多めに盛った。
「どうぞ。ありがとうございましたー」
「はいどうもー。お姉さん疲れてるの?こんなのんびりした公園でも気をつけないと」
お客さんの発ち際にそう笑われた。苦笑いしてすみません、と返す。まったく、誕生日にこれとは縁起が悪そうだ。大体、なぜ今日わざわざバイトを入れてしまったのか自分で自分がわからない。座ると、不真面目きわまりないが春の陽気でまた眠ってしまいそうなので、立って店番を続ける。
休日なので公園にはなかなかに人が多い。まったく、誕生日なのになぜわざわざ―公園でバイトを。 自分で入れた予定に腹が立ち、一瞬顔を歪めそうになったが慌てて踏みとどまった。しかめ面をしていては来る客も来なくなるかもしれない。わざわざ誕生日にバイトをしているのにそんなのことは問題外である。

そんな独り相撲とは無関係に、小さな子供が走り寄ってきた。首から可愛らしい、キャラクターもののがまぐちをぶら下げている。
「桃ミックスソフトくださーい」
そう言って子供は小さな手でぎこちなく小銭を出し、一生懸命背伸びをしながらカウンターに代金を乗せた。あまりにも可愛らしくて、ソフトクリームを少し多めに盛った。
「はーい。こぼさないようにね」
子供ははにかんで嬉しそうに両親らしき二人のもとへ走っていった。「よくできたね」そんな声が聞こえそうな様子で頭を撫でられている。思わず頬をゆるませていると「おねーさん」とガヤガヤした声がして我に返った。

部活帰りらしき少年の集団がいつの間にか店の前を占領していた。
「バニラね」
「俺桃ジェラート」
「あ、俺チョコミックスで」
「はーい抹茶で」
少年達は順々に注文を告げていく。20人くらいいただろうか、後で数えてみると桃関連の商品が15人分だった。
今日はやけに桃味が売れる。少年達にこっそり激励の気持ちを込めて、全員分に少しおまけをした。 20人程の応対を一度にして少し疲れたので椅子に座る。なぜか今日はなんだかんだでお客にアイスを増量してばかりいる。といっても、気持ち程度なので実際には殆ど変わらないかもしれないが。

「百花」
次に目の前に立ったお客に自分の名前を呼ばれた。友達だった。
「どうよ誕生日の売れ行きは」
「まあまあかな」
「思ったより拗ねてないね。誕生日にバイトなのに」
友達はいじわるそうに言ってくる。実際、最初はかなりふてくされていたので少し返事に困ってしまう。
「まあ、自分で入れちゃったバイトだし。気にしてもねー」
強がって答えたが、友達はふうん、と柳のように頷いてメニューを眺めている。
「ご注文は?」
立ち上がってカウンターまで行き、私は尋ねた。
「では桃ジェラートを」
またか、と私は思った。そして思わず口に出してしまった。
「またかって?」
友達が問う。
「今日はなぜかよく桃製品が売れるんだよ」
コーンにジェラートを詰めながら答えると、友達はふうんと少し興味深そうに言った。
「はい、どうぞ」
桃ジェラートを渡す。
「それってさ」
友達は桃ジェラートを受け取りながら言う。
「モモカのモモ、ってことで、桃製品フェアとばかりに神様がこっそり祝ってくれたんじゃないの?」
言い方は少し冗談じみていた。
「売れたらお祝いなの?」
少しドキドキしながらも、笑って返す。
「適当に言ったんだから知らないよ。でも、ちなんでいて面白いじゃない」
でしょ、とスプーンで私を指して言った。
「うん、うん。きっとそうに違いない」
私は何だかすとんと合点がいってしまい、ニヤニヤしながら友達の肩を叩いた。もう誕生日にバイトを入れた甲斐があったと思えるほどに嬉しかった。ただの偶然にしても、嬉しかった。友達は私の喜び様に少し唖然としながらも、にこやかに言ってくれた。
「お誕生日おめでとう、百花」

<終>




*あとがき。
!!!百アクセス記念!!!
百のつく名前を考えたら百花がでてきました。
百花→モモカ→モモ→桃→じゃあ桃製品がよく売れると→ジェラートやソフトクリームだな…
ということで。はい、またダジャレですね。桃か!
感情が「−」から「+」になっていくのを意識してみたつもり。なってないか。企画倒れ(´・ω・`)
「おまけをしていたら自分にもちゃんとおまけ(祝い)がありましたよ」というのも意識してみた。
与えてたからこそ自分が与えられたときに嬉しい。
しかしなんだか中途半端な感じの文章…。アク記念もうやらないかもw123はどうしよう。